主に多重債務者が消費者金融を相手取り訴訟を起こす「過払金問題」の歴史は、決して浅くはありません。しかし、法律家等の専門家以外の人々にその概念が浸透したのは、ごく最近のことです。
 その大きな原因として、長らく国会や政府が本格的な解決に取り組んでこなかったことが挙げられます。結果的に利息制限法、貸金業法等の法整備は実現されました。しかし、そこに至るまでには、消極的立法の誹りを恐れない、裁判所の大胆な法解釈および被害者救済の努力があったのです。
 裁判所主導の変革という点で、過払金問題は水俣病等に代表される公害問題と似た側面を有しています。「本当に根の深い問題に関して、国は無力である」。我々はこうした教訓を重要なものとして心に刻む必要があるのです。