「債務整理」という言葉も、近年ではすっかり人口に膾炙しています。これは、弁護士・司法書士等の協力を得て、法律上存在する債務を判別する作業です。
 日本では男女を問わず、武士道精神が好まれる傾向があります。その延長でしょうか。債務の適法性を勘案せず、「借りたものは返して当たり前」「貸してくれた恩義に報いなければ」といった考えに縛られる債務者は、存外多いのです。武士道精神を普及させた新渡戸稲造も、こうした弊害には愕然とするかもしれません。
 
債務整理の意義は、上記のような国民的土壌を削り取るようにして少しずつ浸透してきました。しかし、「債務整理は権利」といった風潮にまで発展しているとはいえません。
 債務を負っているというだけで、人は暗鬱な気分になります。違法な債務ならば尚更です。誰もが、本来存在しない債務の重圧から逃れ、明朗快活に生きる権利を有しています。
 債務整理をしても、債務は全く減らないかもしれません。しかし、正しい現状認識に基づいた未来設計をすることもまた、我々にとっては重要な権利なのです。